19世紀でもまだ珍しかった女流画家で、印象派の代表的画家でもあるベルト・モリゾの作品「舞踏会にて」です。
産業革命にて生活に余裕が出てきた当時のパリの人々にとって、それまで憧れでしかなかった劇場や舞踏会へ出かけるようになり、社交の場としてもてはやされました。
モリゾの師であるエドゥアール・マネなど当時の画家達の多くも劇場や舞踏会の様子を描いています。
本作品「舞踏会にて」は、他の男性画家が舞踏会や劇場に集う人々の様子を描いたのに対して、女性一人を描いています。
作品 舞踏会にて
ベルト・モリゾは、他の画家達とは違い舞踏会の人々の華やかな様子ではなく、一人の女性のみを描きました。
「舞踏会にて」
(1875年)
本作品は舞踏会へ出かける女性を描いていますが、女性の視線は斜めに向けられ鑑賞者には向けられていません。
当時、舞踏会などでは女性は男性から見られる対象とされており、そのことに対するベルト・モリゾの否定的な意見を表現しているようです。
女性は意思を強く持ち、自身のために着飾たり化粧をしているとの表現をしているようです。
モリゾの特徴となる早く粗い筆跡で、女性のドレスの光沢があるような質感がよく表現されています。
画面を斜め下と上で少し明暗が付けられているのが分かります。
画面左下に物を描かず、女性に扇子を持たせることによって、女性の斜めに向いた視線をより鑑賞者に印象付けています。
本作品は舞踏会場ではなく、実際は、モリゾの家にモデルを招いて描かれています。
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