エドゥアール・マネの最後の代表的作品となる「フォリー・ベルジェールのバー」です。
フォリー・ベルジェールとは、1869年に開業、パリで現在も営業しているミュージックホールです。
当時のフォリー・ベルジェールでは、曲芸やバレエなどが行われ、御客は、食事やお酒をとりながら観劇していました。
また、発表当時から「鏡にうつるバーの女性の後ろ姿が、実際の位置に一致しない事」「瓶の数が相違している事」「バーの女性が応対している紳士が鏡のなかのみで、手前に描かれていない事」など多くの批評家を困惑させました。
バーの女性
「フォリー・ベルジェールのバー」
(1882年)
当時、フォリー・ベルジェールは売春婦を買う秘密の場所と認識されており、バーメイドは娼婦であることがほとんどでした。
バーカウンターに置かれているオレンジが入った皿は、バーメイドが娼婦であることを暗示しています。
女性のモデルは、実際のバーメイドのシュゾンという名の女性で、マネは彼女を自宅のアトリエに呼んで描いています。
マネは、この劇場の常連で、劇場のスケッチを多くしていましたが、本作品の完成のため、アトリエにバーの一部を再現しています。
マネは、「草上の昼食」「オリンピア」で娼婦を暗示する作品を描いており、一貫しています。
マネの署名
マネの署名が一番左のお酒の瓶のラベルに記載されています。
「Manet 1882」と記載されています。
空中ブランコの女性の足
作品の左上には空中ブランコと空中ブランコにのる女性の足が描かれています。
鏡に映るバーメイドの後ろ姿と紳士
鏡に映るバーメイドの位置が右にずれており、バーメイドが対応する紳士が映っていますが手前には何も描かれていません。
2000年に復元された劇場で、オーストリアの美術史家がこの作品の鏡の状況の検証のため写真撮影が行われました。
検証では、バーメイドと紳士は対話しておらず、鑑賞者の視点はバーメイドの少し離れた右側からバーメイドと鏡を見ている状態だとされています。
参考とされた作品
マネは、スペインの巨匠ベラスケスの「ラス・メニーナス」を参考に鏡を使用する表現を本作品をで制作したと言われています。
マネは、ベラスケスを非常に尊敬していたようです。
「ラス・メニーナス」
(1656年)
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