こんにちは、クールベさん(出会い)

絵画

19世紀フランスで写実主義を提唱した画家で、現実世界をありのままに表現しようとしたギュスターヴ・クールベの作品です。

本作品は「出会い」という題名でも呼ばれています。

この作品は、クールベが当時、自身のパトロンであった男性と道端で出会うという日常を題材に描いています。

作品:こんにちは、クールベさん(出会い)

こんにちは、クールベさん
1854年

1854年
ギュスターヴ・クールベ
「こんにちは、クールベさん(出会い)」
ファーブル美術館蔵(フランス モンペリエ)

本作品は、右側に自身を放浪画家として描き、左手にクールベのパトロンとその従者を描いています。

芸術家とパトロンの立場は、対等であることが難しいところクールベは自身とパトロンを対等に描き、どちらかというとクールベの方が偉そうに描かれています。

登場人物の描写:画家(クールベ)

クールベは、モンペリエ(フランス南部の都市)に向かう放浪画家として自身を描いています。

右下にモンペリエに向かう乗合馬車が去っていく様子が描かれ、画家が乗合馬車に乗る運賃も無いことを表現しています。

画家は自信にあふれ、パトロンに対してもへりくだることなく、逆に少し頭を後ろに傾けています。

また、パトロンの倍以上の長さのステッキを持ち、意図的に髭もパトロンの方に向けて描いています。

パトロンと従者が木陰のなかに描かれているのに対して、画家は光のなかに描かれています。

本作品は、クルーべの自信の高さ、自尊心の高さが表現されています。

登場人物の描写:パトロンと従者

左手に描かれている、パトロンは、アルフレッド・ブリュイヤという人物です。

モンペリエの銀行家の息子で、本作品の前年あたりからクールベの作品を購入を始めています。

画家を出迎えに来たパトロンは、帽子と手袋を脱ぎ画家に丁寧な挨拶をしており、従者は深くこうべを垂れています。

当時は、産業化が進みブルジョア階級と一般の民衆との格差が広がっている状況でした。

クールベは、画面右手の画家を一般民衆とし、堂々とした態度で描く事で、社会への批判とこれからの社会の主人公は民衆であることを示そうとしたと言われています。

パトロンのアルフレッド・ブリュイヤは、クールベがパリ万博の横で勝手に開催した個展会場の建設費用のスポンサーとしてもクールベを支援しました。(世界で最初の個展とされています。)

版画:「さまよえるユダヤ人と話す町の市民たち」

本作品は、1831年にピエール・ルループ・ドゥ・マンが制作した版画「さまよえるユダヤ人と話す街の市民たち」からクールベが着想を得たと言われています。

さまよえるユダヤ人と話す街の市民たち
1831年

クールベは実際に髭を生やしてはいましたが、本作品の画家ほど長くはありませんでした。

作品で描かれている風貌は、当時の西ヨーロッパのユダヤ人の特徴でした。

当時のフランス社会は反ユダヤ主義が根強く、ユダヤ人は迫害の対象とされていました。

クールベは、自身の姿をあえて迫害されるユダヤ人の姿で、さらに堂々とした態度で描き、社会への批判を表現しています。

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