17世紀 スペインの宮廷画家として成功したディエゴ・ベラスケスですが、宮廷画家になる前は厨房や食材を描いた作品を多く描いています。
当時、スペインでは厨房や室内の様子を描く静物画が制作されることが多く、師匠から独立して間もないベラスケスも制作に励んだと思われます。
スペイン語で静物画のことをボデゴンと称し、題材として食事や食材が描かれることが多くベラスケスがこのジャンルの発展に寄与したとも言われています。
作品:卵を料理する老婆と少年
ディエゴ・ベラスケスは、スペイン南部のセビリアで生まれ11歳頃に有名画家に弟子入りし6年後の1617年の18歳のときに独立します。
1618年には、師匠の娘と結婚しています。
「卵を料理する老婆と少年」
(1618年)
独立後間もないベラスケスは、カラヴァッジョのような明暗対比を強調した作品を制作しています。
強い光が左から老婆、調理中の卵や食器類に当たって明るくなっており、逆に光が背後から当たる少年の顔は暗い影を描写しています。
宮廷画家となる前のベラスケスは、ボデコンをよく制作しており、本作品の老婆は他の作品のモデルにもなっています。
作品:マルタとマリア宅のキリスト
「マルタとマリア宅のキリスト」
(1618年)
左の老婆は、「卵を料理する老婆と少年」で描かれている老婆と同じモデルです。
マルタとマリアは、キリスト教の新約聖書に登場する姉妹でイエス・キリストと親しく、イエス・キリストが姉妹宅を訪れた際の二人の行動の対比が聖書で述べられています。
作品の奥に、姉のマルタがイエス・キリストを接待し、妹のマリアがイエス・キリストの足元で話に聞きいっている様子が描かれています。
接待を手伝わない妹マリアに姉マルタが不満を述べてるのに対して、イエス・キリストがマルタを諭している様子が描かれています。
ベラスケスが、当時、絵画の主流だった宗教画に厨房画を関連付けて制作しようと試みた作品だと考えられます。
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