イタリアの田舎の風景をバックに聖母子を描いたラファエロ・サンティの作品です。
18世紀、スペイン貴族のアルバ家が所有していたことから「アルバの聖母」と呼ばれています。
ロシアのエルミタージュ美術館の前身である王室コレクションが購入しましたが、ソビエト政府の財政難から秘密裏に海外に売却された作品です。
作品:アルバの聖母
「アルバの聖母」
(1510年)
ラファエロは多くの聖母子像を制作しましたが、本作品では聖母マリア、イエス・キリスト、洗礼者ヨハネの3人の視線が十字架に向けられています。
三角形に登場人物を配置しているのは、ラファエロの他の聖母子像の作品と同様ですが、登場人物の顔は全員左側に配置されています。
聖母マリアの左手と青いマントで画面上のバランスをとっています。
政府が秘密裏に売却
ロシア革命後の1920年代、ソビエト政府は急速な工業化を進めます。
そのため、財政が逼迫し外貨が必要となっていました。
革命で没収した貴族や教会の宝石や家具などは既に売却しており、目を付けたのがエルミタージュ美術館やロシア美術館が所蔵する美術品でした。
美術品は秘密裏に売却が行われましたが、次第に美術品ディーラーや収集家に噂がひろまったようです。
アメリカの銀行家で美術品収集家がその情報を画廊から聞きつけ、「アルバの聖母」を含む21点の絵画をソビエト政府から購入しました。
1937年、この銀行家は、アメリカ政府にナショナル・ギャラリーの建築資金とともにこの21点の絵画を寄贈、現在もナショナル・ギャラリーのコレクションの中核となっています。
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