ルネサンス期の巨匠ラファエロ・サンティとバロック期の巨匠カラヴァジョが同じ題材を作品にしています。
ラファエロの作品は、彼の他の聖母作品と同様に柔らかく優しい作風となっています。
一方、カラヴァジョは彼の特徴でありバッロクの特徴ともなった明暗対比を用いて描いています。
カラヴァッジョの作品は高貴な人物として描写しなければならない聖母を一般の人々のように描写しているとして、不敬であると訴えられて投獄までされてしまった作品です。
ラファエロのロレートの聖母
「ロレートの聖母」
(1508-1509年)
ラファエロの作品はとても柔和で優しいイメージを受けます。
幼児のイエス・キリストが聖母マリアのヴェールにじゃれつき、それを奥から憂鬱な表情をした聖ヨセフが見つめています。
マリアのヴェールは、誕生間もないイエス・キリストをマリア自身がかぶっていたヴェールでくるんだと言う伝承から描かれています。
また、将来イエス・キリストが磔刑になることを予兆する表現ともされています。
聖ヨセフが憂鬱な表情をしているのは、こらからイエス・キリストが受ける受難を意味しているとされています。
X線調査で聖ヨセフは後から描き加えられた事が判明しています。
当初は窓が描かれていたようですが塗りつぶされ、聖ヨセフに変更されています。
また、イエス・キリストの右足の位置も変更されていることが判明しています。
カラヴァッジョのロレートの聖母
「ロレートの聖母」
(1604-1606年)
カラヴァッジョの描いた「ロレートの聖母」は肖像画における聖母マリアの描写の仕方に改革をもたらしたと言われています。
聖母とイエス・キリストを高貴な人物と表現されているのが頭上の円光だけとなっています。
また、聖母マリアの足は、巡礼者と同じく素足で描かれています。
暗闇から現れてたような聖母マリアの描写は、肩を大きく出した当時としては露出が高い服装の描写で、神々しさはあまり感じられません。
カラヴァジョは当時ライバルの画家から、この作品に描いた聖母子は不敬にあたるとして裁判を起こされ投獄されています。
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