フランスのロココ期の画家ジャン・シメオン・シャルダンの作品「食前の祈り」です。
シャルダンは甘美で豪華な作品が多く描かれたロココ期に中産階級の人々の生活を多く描いた画家です。
本作品は、画家として成功したシャルダンが、フランス国王ルイ15世への謁見が許された際に献上した作品の一つです。
本作品もルイ15世のほか、政治家や貴族にも好評を得たため、複数制作され現在5点存在が確認されています。
1点はロシア皇帝のエカチェリーナ2世から注文を受けて制作されています。
作品 食前の祈り(ルーヴル美術館)
宮廷文化全盛のロココ期に中産階級の生活や静物画を描きながらも、ロココ期の代表的な画家とされるジャン・シメオン・シャルダン。
「日除けをかぶる自画像」
(1775年)
自画像からも実直な人間性が伺えます。
シャルダンは「赤エイ」という作品で賞賛され王立アカデミーの正会員となり、その後も静物画などでサロンへ出品を続け、ルイ15世への謁見の機会をることができます。
「赤エイ」
(1728年)
作品:食前の祈り
シャルダンがルイ15世への謁見を許され、その際に献上した作品の一点が本作品「食前の祈り」です。
ロココ期のフランスは宮廷文化が全盛で享楽的な作品が多く制作されていましたが、シャルダンは市民の生活を描きました。
作品は貴族にも好まれ、現在5点存在しています。
ルーヴル技術館版
「食前の祈り」
(1740年)
母親が幼い子に食事前にはお祈りをすることを諭している場面が描かれています。ルーヴル美術館にはもう1点同作品が所蔵されています。
エルミタージュ美術館版
「食前の祈り」
(1744年)
ルイ15世への献上作品と制作された4年後、当時のロシア女帝のエカチェリーナ2世から同作品の注文を受けます。
エカチェリーナ2世は、同作品をとても気に入り自身も所有したいと注文したとされています。
作品の構成は全く同じですが、右下に取っ手の長いフライパンのような物が追加されています。
母親の表情もルーヴル美術館のものと比較すると優しく見えます。
ボイスマン・ヴァン・ベーニンゲン美術館蔵
オランダ ロッテルダムにあるボイスマン・ヴァン・ベーニング美術館所蔵のものです。
「食前の祈り」
(1761年)
作品が横に伸び左に少年が追加されています。トレーを持っていますが、何のために追加されたのか意図は分かっておりません。
他1点、ルーヴル美術館と構図が同様の作品がスウェーデン国立美術館に所蔵されています。
シャルダンの写実的表現で市民の生活を描く作風はフェルメールやレンブラントが活躍した17世紀オランダ絵画の影響を受けていると考えられています。
また、シャルダンの画面構成はのちの印象派に影響を与えたとも言われています。
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