フィンセント・ファン・ゴッホがオランダからパリに出て印象派の作風の影響を受け始めていた時期に描いた作品です。
モデルは、イタリア出身のカフェ・タンブランの女主人アゴスティーナ・セガトーリで、ゴッホとは一時期交際していたとも言われている女性です。
アゴスティーナ・セガトーリはゴッホの他、ドラクロワ、コロー、マネなどの画家のモデルを務めたプロのモデルとしても有名でした。
作品 カフェ・タンブランの女
モデルのアゴスティーナ・セガトーリは疲れ切った表情で描かれ、両目の焦点が定まっていないような描写をされています。
タンブランに似せたテーブルの上にはアルコールが置かれていることから、酔いがまわっている様子が描かれたと思われます。
また作品の右上には店内に飾られていた浮世絵が描かれており、当時のパリでの浮世絵ブームを伺えます。
「カフェ・タンブランの女」
(1887年)
当時、パリでは安価で強いお酒アブサンが流行り、アルコール中毒が社会問題化していました。また、当時の若い画家たちはアブサンを好んで飲んでおり、ロートレックなどは体を壊すことになってしまっています。
作品のお酒もおそらくアブサンと考えられ、エドガー・ドガの「アブサン(カフェにて)」を参考にしているとも言われています。
「アブサン(カフェにて)」
(1876年)
また、ロートレックは、アブサンを飲むゴッホを描いていますが場所はカフェ・タンブランだと考えられています。
「フィンセント・ファン・ゴッホの肖像」
(1888年)
カミュー・コローのアゴスティーナ
アゴスティーナ・セガトーリは、プロのモデルとしてゴッホやドガの他、ドラクロワ、コロー、マネなどの画家のモデルも務めていました。
「アゴスティーナ」
(1866年)
上記の作品は、風景画で有名となったコローが描いたアゴスティーナ・セガトーリです。
ゴッホの「カフェ・タンブランの女」とは逆に、モデルとしてのセガトーリは堂々と描かれています。
コローはイタリアへの憧れから度々イタリアへ旅行していますが、イタリア出身のセガトーリにイタリアを体現させて表現したのかもしれません。
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