17世紀初期のスペイン絵画の黄金期に活躍したフランシスコ・デ・スルバランの作品「瞑想する聖フランシスコ」で、スルバランが好んだ明暗対比が表現された作品です。
スルバランは宗教画や静物画を描きスペイン絵画の巨匠ベラスケスの友人でもありました。
スルバランは「スペインのカラヴアッジョ」と呼ばれるほど明暗対比を好み作品でも表現しています。
本作品「瞑想する聖フランシスコ」は明暗対比のほか、スルバランの宗教観も表現されていると思われます。
本作品は単に「聖フランシスコ」「アッシジの聖フランシスコ」と呼ばれる場合もあります。
作品 瞑想する聖フランシスコ
イタリア中部の町アッシジ生まれの聖人フランシスコが祈りを捧げる様子を描いた作品ですが、表情などは暗闇のなかで伺うことができないように描かれています。
暗闇のなかで聖人の鼻や口元、手などが浮きあがっているようなイメージを受けます。
「瞑想する聖フランシスコ」
(1631-1640年)
口を半開きにして上を見上げる聖人の表情は祈りの深さを表しているようです。
聖人の表情はフードの影で暗い中にえがかれており、作品では手と手に持つ頭蓋骨の方が目立っています。
スルラバンが聖人の表情よりも頭蓋骨を抱え祈る姿自体を重視していた事の表れだと考えられます。
鑑賞者の視線を十字に誘導する構図
スルラバンは本作品で鑑賞者の視線が十字を描くように誘導していると考えられています。
床に垂直に膝立ちする聖人、したに降ろした聖人の二の腕、したに足れる腰ひもは上から下に視線を誘導しています。
次に曲げた肘から手や頭蓋骨にむかって視線が誘導されています。
スルラバンは作品に自身の宗教的感情を表現するなど活躍しましたが、徐々に流行が甘美で感傷的な画風に移っていき徐々に人気を失っていったようです。
代わりに人気を博していった画家がムリーリョで、スルバランはベラスケスを頼ったようですが再び注目されることなく1664年に亡くなったようです。
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