ヴィルヘルム・ハンマースホイは、19世紀後半から20世紀に活躍したデンマークの画家で白、黒、灰色を基調としたモノトーンの作品を多く制作した画家です。
本作品「背を向けた若い女性のいる室内」は代表作のひとつで、妻のイーダをモデルに描いた作品です。
ハンマースホイは北欧のフェルメールとも呼ばれることがあり、作品の何点かはフェルメールの影響を受けたと考えられる作品があります。
ハンマースホイは生前から評価を得ていましたが、時代が過ぎると忘れられた存在となってしまい、20世紀末に再評価されるようになった画家です。
「自画像」(ヴィルヘルム・ハマスホイ)
作品 背を向けた若い女性のいる室内
ハンマースホイの作品に登場する人物の多くは鑑賞者に背を向けた姿で描かれることが多く、正面を向いた描写の場合でも鑑賞者と視線が合わないように描かれています。
また、登場人物の多くは妻イーダをモデルにしていることが多く、別の場合も家族、友人をモデルに描かれています。
本作品のモデルも妻イーダだとされています。
「背を向けた若い女性のいる室内」
(1903-1904年)
壁やテーブル、壁にかかった画中画などで背景は垂直と並行のラインのみで描写されており、そのラインの中に丸味を帯びたパンチボウルが描かれています。
直線で構成された背景の中に描かれたパンチボウルが鑑賞者の目を引き付け、存在感が大きいく登場人物以上に目立たたせています。
ハンマースホイはパンチボウルに存在感を持たせるため、実物のパンチボウルの大きさよりもかなり大きく作品中に描きました。
黒い服装の女性と対比させているような印象も受けます。
ハンマースホイは実在の室内を描いていますが、パンチボウル同様に作品構成の都合で画中画も実物より大きく描いています。
フェルメールの影響のある作品
ハンマースホイは北欧のフェルメールと呼ばれることがあり、フェルメールの影響を受けたと思われる作品も数点あります。
特に作品「手紙を読むイーダ」をフェルメールの「手紙を読む青衣の女性」から着想を得ていると思われます。
「手紙を読むイーダ」
(1900年)
「手紙を読む青衣の女性」
(1662-1663年)
ハンマースホイが北欧のフェルメールと呼ばれるのは、直線を多用した室内描写を多く描き、登場人物も少ないことからだと思われますが、白、黒、灰色を基調とした作品で静けさを強調した表現はハンマースホイ独自の表現です。
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