アメリカ人画家で主にパリやロンドンで活躍したジョン・シンガー・サージェントの作品「エドワード・D・ボイトの娘たち」です。
エドワード・D・ボイトは夫婦共々、サージェントの友人で娘たちの肖像画の作成をサージェントへ依頼したようです。
ボイトは、伝統的な肖像画を望んだようですがサージェントの「新しい試みをしたい」という依頼を尊重し本作品のような風景画のような肖像画となったと言われています。
また、本作品に描かれた暗めの部屋で少女が鑑賞者を見つめる様子などは、サージェントが研究していたバッロク期の巨匠でスペイン人画家のディエゴ・べラスケスの代表作「ラス・メニーナス」の影響を受けていると言われています。
作品 エドワード・D・ボイトの娘たち
友人のボイト夫妻からの依頼で描いた4人の少女の肖像画ですが、4人の描写がそれぞれ違っており、肖像画ながら長女、次女の顔ははっきりと描かれていません。
「エドワード・D・ボイトの娘たち」
(1882年)
本作品はパリのボイトの家で描かれ、モデルの少女はそれぞれ、床に座っている四女が4歳、左に立っているのが三女で8歳、作品中央で鑑賞者を見めているのが次女で12歳、大きな花瓶に寄りかかって顔が全く見えないのが長女で14歳の娘たちです。
少女たちは全員白いエプロンをしており、長女と次女は同じような服装です。
年齢があがるほど奥の暗い部屋に立っており、次女から長女にかけて表情も隠れて行くことから、4人の娘達で子供から大人への女性の成長過程を描いているような印象を受けます。
右端に大きく描かれた花瓶と長女がもたれかかっている大きな花瓶は有田焼の花瓶で、実物がボイト家からボストン美術館に寄贈されています。
現在、ボストン美術館では本作品を挟むように実物がおかれて展示されています。
サージェントの代表作「カーネーション、リリー、リリー、ローズ」で描かれた提灯とともに、作品内にジャポニズムを取り入れている具体例です。
また、「カーネーション、リリー、リリー、ローズ」と同様に本作品は、あまり用いられない正方形にしたキャンパスに描かれています。
ベラスケス 「ラス・メニーナス」の影響
本作品の構成は、スペイン人画家ディエゴ・ベラスケスの代表作「ラス・メニーナス」の影響を受けていると言われています。
「ラス・メニーナス」
(1656年)
サージェントは、ベラスケスの研究をしていたこともあり、作品制作にあたり参考にしたと考えられます。
描かれた空間の印象、王女が鑑賞者を見つめる様子、暗く控えめな色使いなどに影響がみられると言われています。
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