19世紀、現実をありのままに描写しようとした写実主義の旗手でその後の絵画に影響を与えたギュスターヴ・クールベの作品「黒い犬を連れた自画像」です。
本作品はクールベがサロンに入選した最初の作品です。クールベが25歳の時で、他の画家たちと比べると遅いデビューと言えます。
作品上部に丸味をおびた形で額をはめられたような跡があることから、サロンへは上部は丸味をおびた画面で展示されたと思われます。
クールベはキャリアのうちで多くの自画像をのこしていますが、本作品はキャリア初期の作品で、描かれているのは自信に満ちた若い画家の印象を受けます。
作品 黒い犬を連れた自画像
本作品で画家は長髪、黒いケープ、縞模様のズボンで自身を描いていますが、これは当時流行していた髪形・服装で、若者世代の特徴だったようです。
また、画家が下を見下ろすように描かれているため、ドアや部屋の上部に展示し鑑賞者が作品を見上げることを想定して制作されたとも言われています。
「黒い犬を連れた自画像」
(1842-1844年)
作品の上部の汚れのような跡は額縁のあとと言われており、作品の上部は半円形にされ展示されたと思われます。
作品左下にはクールベの署名と1842年と記載がされています。
画家と一緒に描かれている黒い犬は実際に、画家が贈り物として受け取った犬で同時期の自画像にも登場しています。
「黒い犬を連れた作者の小さな肖像」
(1842年)
黒い犬の他、手にはパイプを持ち、杖とスケッチブックを後ろの岩に立てかけている描写は、才能があり、自信に満ちた若者がこれからパリの画壇に挑戦するための旅路の途中に休憩をとっているようにも見えます。
クールベの故郷はフランスとスイスの国境付近の地方の村ですが、背景はその故郷の風景を描いているのではないかとも思われます。
コメント