18世紀、優雅で甘美な画風のロココ全盛の時代にロココとは反対の画風で静物画や庶民の生活様式を描いたジャン・シメオン・シャルダンの出世作「赤エイ」です。
当時は絵画のなかでの宗教画や歴史画の地位が高く、静物画の地位は低いものでした。
そんな時代においても本作品「赤エイ」は高い評価を受け、シャルダンは王立絵画彫刻アカデミーの正会員の地位を得ることとなります。
本作品でシャルダンは、内臓が出されたショッキングな描写をした赤エイを画面の中心におき左右で配置物の性格を分け、鑑賞者に安心感を与える三角形の構図で物を配置するなど画面構成にこだわった作品です。
作品 赤エイ
本作品「赤エイ」は他の作品「食卓(ビュッフェ)」とともにサロンに出品され、当時、地位が低かった静物画にも関わらず賞賛を受けます。
「赤エイ」
(1725年頃)
「食卓(ビュッフェ)」
(1728年)
「赤エイ」では、内臓がだされたグロテスクな描写の赤エイを画面の中心に配置し左側に生命がある物、右側には生命が無い物が配置されています。
左側には猫、蠣、魚など生命がある物が描かれており、右側にはテーブルクロス、ナイフ、水差しなど生命が無い物が描かれ左右で対比さています。
エイの内臓が生命のある物が描かれた左側に描かれ、蠣の貝殻を踏んだ猫が毛を逆立てているなど画面の左側にはより生命を印象付ける描写がされています。
鑑賞者の視線も自然に、中心のエイから生命を感じる左側に移り、そこから右側に移るよう誘導されているようです。
また、本作品はエイの頭部を頂点にして配置された物が三角形の中に描かれており、鑑賞者に安心感を与えています。
このようなシャルダンの計算された構成による物の配置は、後のキュピズムの画家たちにも影響を与え、ポール・セザンヌやアンリ・マティスも本作品「赤エイ」を模写したと言われています。
コメント