盛期ルネサンス期のイタリア ヴェネチアで活躍した、ヴェネチア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオが描いた受胎告知作品の一つです。
多くの画家が受胎告知を題材に作品を制作していますが、ティツィアーノ自身も複数の受胎告知作品を制作しています。
本作品「マルキオストロの受胎告知」は多くの受胎告知作品のなかでも、革新的な構成で制作されています。
マルキオストロとは礼拝堂の名前で、本作品はその礼拝堂の祭壇画として制作され現在もその礼拝堂に所蔵されています。
作品 マルキオストロの受胎告知
当時、受胎告知の場面を描く場合、右側に聖母マリア、左側に大天使ガブリエルを配置するのが通例でした。
「受胎告知」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
(1472-1475年)
本作品でティツィアーノは通例とは反対に聖母を左側に大天使ガブリエルを右側に配置しています。
「マルキオストロの受胎告知」
(1519-1520年)
また、本作品では大天使ガブリエルが後ろから聖母マリアに告知し、聖母マリアが後ろを振り返っている様子で描かれています。
また、神聖な光と聖母マリアを対角線上に描き、光が聖母マリアを神々しく照らす描写をしています。
柱の奥から、受胎告知の様子を見ているのは礼拝堂の寄進者で司教の秘書ブロッカルド・マルキオストロという人物です。
本作品は後にロレンツィオ・ロットの作品の「受胎告知」の構成に大きく影響を及ぼします。
「受胎告知」(ロレンツィオ・ロット)
(1527年)
ロットはティツィアーノの作品からより聖母マリアに人間味を持たせ、大天使ガブリエルの登場に聖母マリアが驚く様子で受胎告知を描いています。
また、ロレンツィオ・ロットは、「ランプのある青年の肖像」という作品でブロッカルド・マルキオストロの肖像も描いています。
「ランプのある青年の肖像」
(1506年頃)
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