バレリーナを描いた作品を多くのこし、印象派の創設時からのメンバーでもあるエドガー・ドガのキャリア初期の作品「ベレッリ家の肖像」です。
ドガが描いた肖像画の中でも傑作とも言われている作品です。
作品のモデルであるベレッリ家はドガの叔母ラウラ・ベレッリの家族でイタリアのフィレンツェに住んでおり、ドガは3年間、美術の勉強のため叔母の家に滞在しました。
叔母のラウラの他、娘2人と夫であるナポリの貴族ジェンローナ・ベレッリ男爵が描かれている本作品は、幸せな家族の肖像というよりは冷たい印象を受ける作品です。
実際、ウラウは精神を少し病んだ状態でもあり、夫を嫌っていたようです。
作品 ベレッリ家の肖像
叔母家族を描いた作品ですが、ドガは家族の状況やそれぞれの心情を的確に表現している作品と言われています。
「ベレッリ家の肖像」
(1856-1860年)
叔母と娘たちは黒い服を着ており喪服のようです。ドガの祖父、叔母の父親が他界してすぐであったため喪服を着ていると思われます。
画中画としてドガが描いた肖像画が描かれています。
父親の肖像画の前にたつ叔母の表情は無表情で、家族とは別の方に視線を向けています。
叔母ラウラは、精神的に不安定な状況で、心もどこか家族から離れてしまっているような印象を受けます。
家族のなかで唯一、鑑賞者に視線を向けているのは長女で、何か鑑賞者に訴えかけているような印象を与えており、母親と父親の悪い関係に不安を抱いているようにも見えます。
椅子に座り、体を母親に向け視線を父親に向けているのは次女で、次女が母親と父親の関係をなんとか保っている存在に見えます。
足を組んでおり、作品では右足しか描かれていません。緊張感を少し和らげている描写のようです。
ベレッリ家の長であり叔母の夫であるジェンローナ・ベレッリ男爵は鑑賞者には背を向けて描かれおり家族内での立場や孤独感が表現されています。
また、他の家族と少し距離を開けて描かれており、家族間の関係性も描かれているようです。
また、作品右下には飼い犬が描かれていますが、頭が画面から出てしまっており、こちらも家族の状況を表現しているのかもしれません。
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