19世紀のフランス人画家で新印象派といわれる印象派の分割筆触をさらに進め点描描写を確立させた画家ジョルジュ・スーラの初期の作品です。
本作品「アニエールの水浴」はまだスーラが点描描写を試みはじめた作品で印象派の技法と点描描写で描かれている作品となっています。
アニエールとはパリ郊外北西のセーヌ河沿いの地区で、印象派画家がよく訪れて作品を制作していたアルジャントゥイユにパリから向かう途中にあります。
アルジャントゥイユ同様にアニエールも当時のパリ市民が水浴や日光浴を楽しみに訪れていました。
作品 アニエールの水浴
本作品「アニエールの水浴」は縦201cm、横301cmと大きな作品です。スーラは本作品をサロンに出品していますが落選しています。
「アニエールの水浴」
(1884年)
印象派が色と色を混ぜ合わせずに描く技法からさらに進展させて色の点で光や色彩を描写する点描描写をスーラは確立しますが、本作品はその試みをおこなっている作品です。
人物の描写はとても不思議な印象を受ける描写となっており、あまり生気を感じられない印象です。
セーヌ河の水面の描写は、印象派の技法に近い描写ですが芝生は点描による描写となっています。
作品の奥には工場が描かれています。アニエールはアルジャントゥイユほどパリから遠くなかったことから余暇を楽しむ場所ながら工場地区を臨む地区だったようです。
作品右に描かれている島は、グランド・シャット島で、スーラはその島で余暇を楽しむ人々を描いた作品で代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を本作品「アニエールの水浴」完成後にすぐ制作をはじめています。
「グランド・ジャット島の日曜日の午後」
(1884-1886年)
「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の方がより点描描写がはっきりとしています。
また、「アニエールの水浴」に描かれている人々に比べると、「グランド・ジャット島の日曜日の午後」に描かれている人々は上流階級の人々のようです。
三色旗が掲げられた船はグランド・ジャット島へ向かっており、上流階級の人々のような描写をしています。
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