ルネサンス初期にイタリア フィレンツェで活躍した画家サンドロ・ボッティチェッリのキャリア後期の作品「チェステッロの受胎告知」です。
受胎告知は天使がマリアにイエス・キリストを身籠ること伝える新約聖書の場面で、多くの画家が制作しています。
ボッティチェッリ自身も複数の受胎告知の場面を制作しており、本作品「チェステッロの受胎告知」はその内の一作です。
チェステッロとは、フィレンツェにある修道院の名前で、ボッティチェッリの支援者の銀行家がチェステッロ修道院を飾るためにボッティチェッリに注文、制作した作品です。
作品 チェステッロの受胎告知
多くの画家が制作した受胎告知の場面で、ボッティチェッリも複数の受胎告知を題材にした作品を制作しています。
本作品「チェステッロの受胎告知」は、ちょうど天使がマリアのもとを訪れ、マリアがイエス・キリストを身籠ることを伝えた場面で、マリアが驚いている様子を描いています。
「チェステッロの受胎告知」
(1489年)
天使の突然の登場とイエス・キリストを身籠る知らせにマリアはとても驚き、身を屈めて引いている様子で描かれています。
画面上に描かれる壁や床が直線的に描かれており、よりマリアのポーズが印象付けられます。
しかし、マリアの表情は落ち着いているようにも見え、視線は天使ではなく自身が伸ばした右手を向いており、その右手は天使と同じようなポーズをしています。
また、天使とマリアが伸ばす腕は対角線上に描かれており、マリアの表情と視線とともに、マリアが驚きとともに、イエス・キリストを身籠ることを受け入れることを表現しているようです。
窓外にはルネサンス期に確立する遠近法で外の風景が描かれています。
天使がもつ白百合は聖母となるマリアの純潔さを表し、また、窓の外に描かれた塀で囲まれた庭はマリアの穢されていない子宮を表しています。
本作品では、ボッティチェッリは天使が突然現れ、マリアが驚く場面を描いていますが、他の作品では、マリアがイエス・キリストを身籠ることを受け入れ、天使に祝福されるような場面も描いています。
「受胎告知」
(1485年)
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