19世紀、近代化が進むフランスの様子を描くとともに革新的な作品を多く発表し、印象派の先駆的役割を果たしたエドゥアール・マネの作品「アトリエの昼食」です。
本作品「アトリエの昼食」はマネの作品のなかでも、画家が表現しようと意図がわからず、画家からの説明もないため、不思議な作品との位置付けをされています。
作品の中央の男性は当時16歳のマネの息子レオンですが、後ろでパイプを吸っている男性やメイドの女性のモデルは不明です。
同年に発表された「バルコニー」同様、登場人物の視線はお互いに合っておらず、当時の人々の互いへの無関心さを表現しているとの見解もあります。
「バルコニー」と違い、本作品には人物以外に静物も多く描かれていますが、その意図が不明な物が多く、本作品をより不思議な物としています。
作品 アトリエの昼食
登場人物の視線が互いに合っておらず、お互いに興味を持っていない様子から当時の人々の人への無関心さを表現している作品との見解がある作品ですが、画家の意図は、はっきりとは分からないままです。
「アトリエの昼食」
(1868年)
同年に描かれた、「バルコニー」も同様な描写がされていることから、そのような見解がされているかと思います。
「バルコニー」
(1868‐1869年)
本作品「アトリエで昼食」の前面に描かれているのは、当時16歳のマネの息子レオンです。
レオンの視線は外を見ている様子で、無表情な印象です。
後ろのパイプを吸っている男性は、レオンと逆に室内に視線を送っています。
メイドの女性は、正面を見ているように見えますし、レオンに視線を送っているように見えます。
どちらにしていも、3人の視線は合っていません。
画面左下の椅子には甲冑、刀、楽器が置かれていますが、意味していることは不明なままです。
また、メイドの女性の隣には、大きな鉢上が描かれており、中央より少し右寄りに描かれたレオンや後ろの男性と画面上のバランスをとっているようです。
本作品に描いた息子レオンは、妻シュザンヌがマネと結婚する前に産んだ子で、実は当時からマネの父親の子ではないかとの噂がありました。
シュザンヌは、ピアノ教師としてマネ家に来て、マネと知り合い交際がはじまっています。
レオンの後ろでパイプを吸っている男性をマネとすると、マネの視線は自身の所有物や使用人へ向いていて、レオンには向いていないとも受け取れます。
また、テーブルが境界線となっているようにも見え、マネの複雑な心境を描いたのかもしれません。
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