ルネサンス盛期、レオナル・ド・ダヴィンチ、ミケランジェロとともに三大巨匠とされたラファエロ・サンティの作品「仔羊のいる聖家族」です。
ラファエロは聖母子像を多く制作しており、聖母子の画家と呼ばれるほどです。
本作品では聖母子のほかに父親となる聖ヨセフが加えられた聖家族が描かれています。
聖家族は、幼子イエス・キリストを起点に聖ヨセフに向かってピラミッドを成すような構成で描かれています。
多くの聖母子像、聖家族像が構成上もっとも安定感を印象づける三角形の構成で描くことが多いラファエロにとっては、珍しい構成となっています。
作品 仔羊のいる聖家族
本作品では、幼子イエス・キリストが仔羊の上にのり、それを聖母マリアが引き離そうとしている様子を聖ヨセフが見ている場面を描いています。
「仔羊のいる聖家族」
(1507年頃)
仔羊は、これからイエス・キリストが受ける受難の象徴として作品に描かれており、聖母マリアが引き離そうとしています。
聖母マリアとイエス・キリストの後ろには聖家族がエジプトへ逃避する様子が小さく描かれています。
本作品は、現在は所在不明なスペイン王室の記録にあるラファエロ作品「エジプトへの逃避途上の休息」のことではないかとの説があります。
多くの聖家族、聖母子像を三角形の構図にて描くことが多いラファエロですが、本作品では高さ順に横に並べるように人物を配置し三角形を構成していません。
「牧場の聖母」
(1506年頃)
また、幼子イエス・キリストと聖母マリア、聖ヨセフの視線によって横の配置を強調しているように思えます。
ラファエロには珍しい人物配置となっていますが、画面対角線上に聖母マリアを配置し、人物の頭の位置などが対角線を成すように描いており、作品に対しても安定感を与えています。
ラファエロの描く幼子イエス・キリストを見守る聖母マリアは、表情がとても柔らかく、穏やかに描かれ、聖母子の画家と言われる理由の一つとなっています。
本作品の聖母マリアも他の作品同様に優しく穏やかな表情で描かれており、他の画家の聖母子、聖家族像とは違いより人間味を帯びています。
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