19世紀前半からパリでは新聞や雑誌の発売が開始されました。
一方で識字率がそれほど高くなかったため風刺画や挿絵が果たす役割が高く、そのような状況下、風刺画画家として活躍してオノレ・ドーミエの油彩画「洗濯女」です。
ドーミエの主な活躍は風刺画でしたが、生涯で三百近くの油彩画も制作していましたが、生前はほとんど発表されていませんでした。
ドーミエの油彩画は風刺画画家らしく当時の一般の人々の生活の様子が描かれ、その描写は厳しい生活ののかでも逞しく生きる市民を表現しています。
作品 洗濯女
本作品は、ドーミエが暮らしていたセーヌ川岸からよく目にしていた、セーヌ川で洗濯した後に石段を上がってくる女性の様子を描いた作品です。
「洗濯女」
(1863年頃)
描かれた場所は、パリのセーヌ川の中州となるサン=ルイ島で、古くから貴族や著名人が住む高級住宅街です。
描かれている親子は、そこで洗濯を仕事として生活している女性とその子供のようです。
子供を利用して、親子で三角形の構図を構成して、作品に安定感を与えています。
親子の表情は描かず、洗濯ベラで遊ぶ子供や多くの洗濯を抱え石段を登ってくる女性の描写にたいする鑑賞者の受ける印象に委ねています。
画面の対角線に平行に描かれる親子の姿勢は、何か疲れているような印象を与えます。
また、親子の前は暗く、後ろの高級住宅街が明るく描かれており、意図的に対比しているようです。
厳しい生活をしている親子と高級住宅街の単純な対比とともに、厳しい生活のなかでも逞しく子育てをしている母親への賛辞として背景を明るく描いているとも言われています。
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