フィンセント・ファン・ゴッホが故郷のオランダの巨匠レンブラント・ファン・レインの作品「ラザロの復活」を模写した作品です。
ゴッホ自身んもレンブラントを尊敬しており、その作風や技術についてよく研究していたようです。
本作品では、レンブラントの作品の模写ではあるものの、かなり独自性を持って描かれています。
アルルでのゴーギャンとの共同生活を終え、サン=レミでの療養中に制作した本作品は、模写でありながらもゴッホの当時の精神状況を表現している印象を受けます。
作品 ラザロの復活(模写)
オリジナル作品は17世紀オランダ黄金期に活躍したレンブラント・ファン・レインの作品です。
「ラザロの復活」(レンブラント・ファン・レイン)
(1630‐1632年頃)
イエス・キリストが亡くなったラザロという人物を呼び起こしている場面で、ラザロの姉妹や集まった人々が驚いている場面を描いています。
ゴッホはこの作品のパンフレット写真を見て模写しており、配色は完全にゴッホ独自のものですが、構成も独自なものに変えています。
「ラザロの復活(模写)」
(1890年)
レンブラントのオリジナルでは、墓が置かれた屋内の暗闇で描かれいますが、ゴッホは太陽が描かれ、強い日差しを受けている様子で描いています。
ゴッホは、南フランスの明るい陽射しの景色に憧れアルルに移住、そこでの若い画家達で共同生活を起こることを夢見ます。
しかし実際は、ゴーギャンだけとの共同生活、それも短い期間で終わりとなってしまいます。
オリジナルとは違う屋外、太陽の描写はゴッホの当時のかなわない自身の夢を描写しているのかもしれません。
また、精神を病んだとしてサン=レミで療養を余儀なくされたゴッホは自身をラザロに投影しているのかもしれません。
一方で、陽に照らされた驚くラザロの姉妹は、希望を失っておらず、作品制作を続ける自身を投影しているのかもしれません。
陽の光が当たらないラザロの頭の周りが明るく彩色されており、ゴッホが今後の自身の将来に希望をもっていることを表現しているように感じます。
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